Novel Creator として創作活動しています。小説『ネット恋愛』・・・3の倍数日に連載中☆ミ・・・☆

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訪問ありがとうございます♪


突然ですが当ブログで連載してきた小説『ネット恋愛』ですが


都合によりFC2での連載を中止することに決めました!


今後は当管理人のメインブログである


アメブロ版【堕天使のハープ】にて


3の倍数日に連載させて頂きます♪


堕天使のハープ


それでは今後ともよろしくお願いします☆ミ


(^v^)




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小説『ネット恋愛』第1章 第16話 面食い
 第①章 出会い  

  第16話 面食い


 女子高生“なお”とのメル友関係が終了して、次に親しくなったメル友は、同じ都内に住む女性だった。

 そのメル友の名前は“かおり”

 彼女は二十二歳で、上野あたりに住んでいるらしい。そんな“かおり”とは気が合ったせいか、すぐに親しく頻繁にメールを交わすようになり、電話で会話するようになるまでさほど時間はかからなかった。さらに“かおり”と実際に会う約束をすんなりと得られたのだった。

 “かおり”は成人女性にしては警戒心が強くはなかった。一日数回のメールを一週間ほど続けたのちに、電話での会話を二、三度しただけで、僕への警戒心を解いてくれたらしい。

 ちなみに僕の方がメル友の女性たちを警戒するということは、まずなかった。むしろ早く会いたいばかりで、できることならすぐにでもカノジョにして、やれることをやってしまいたいという下心しか頭になかったからだ。

 “かおり”は同じ都内に住み、カレシもいない。これは僕にとって見込みのあるカノジョ候補になり得た。そんな“かおり”に対して食事に誘ったのだけど、彼女は迷うことなく誘いに応じてくれた。これは大いに脈があると言えた。

 僕は、“かおり”の好意的な反応に喜びと期待で胸が膨らんだのだけど、しかし、次第に不安を感じてくるようになった。

 もし“かおり”がまったく可愛くなかったら、どうしよう?

 面食いである僕は可愛い女性にしか興味がない。もし“かおり”と会った瞬間に、ショックで全身が固まってしまうくらい可愛くなかったらどうしよう?

 そもそもメールで知り合って間もない男とすぐに、しかも二人きりで会えるという“かおり”の感覚は疑うべきではないのか?もしかしたら“かおり”は今まで男にまったく縁がなくて、彼女からしてみたら僕は、やっと罠にかかった獲物なのかもしれない。

 性格的に取り越し苦労な気質を持つ僕は、せっかく“かおり”と会える約束をしたのにもかかわらず、根拠のない空想を膨らませて自分自身を不安な気持ちに陥らせてしまっていた。しかし“かおり”への好奇心と下心は、そんな不安に幾らか勝っていたのだった。



 “かおり”とは今週末の土曜日の夕方に、品川駅の改札口付近で待ち合わせをする約束を交わした。

 その約束の当日である土曜日、アルバイトが休みだった僕は、午前中に“かおり”へメールを送った。

 『おはよう。夕方に会えるのが楽しみだよ』

 そんな内容のメールではあったけれど、その意図するところは、本当に“かおり”が僕と会う気があるのかを再確認することにあった。

 まもなく“かおり”からメールの返信があった。

 『おはよう。私も楽しみにしているよ。品川に着いたら教えてね』

 それは、いつものように絵文字と顔文字が混じった可愛らしいメールだった。それを見た僕は、“かおり”は本当に僕に会ってくれるのだと安心したのだった。

 品川駅での待ち合わせ時間は夕方の六時。

 僕は午後三時を過ぎた頃から外出の準備を始めた。

 久しぶりにプライベートで女性に会えるということで、いつも以上にシャワーに時間をかけた。もしかしたら食事の後にホテルへ行くことになるかもしれない。そんなスケベな期待は、やがて僕の血の気を下半身に集めさせ、僕自身を期待で硬くさせたのだった。

 待ち合わせ時間の二時間前には南葛西のアパートを出発した。余裕をもって早めに到着するためだった。

 葛西臨海公園駅から京葉線に乗って東京まで出たあと、東海道線に乗り換えれば品川はすぐだった。アルバイト先への通勤ルートと同じだ。しかし足取りの軽さはまったく違う。

 なぜなら、今日はアルバイトへ行くのではなく、女性に会いに行くのだから。




次回、小説『ネット恋愛』の更新は10月24日の予定です。






小説『ネット恋愛』第1章 第15話 削減
 
 第①章 出会い  

  第15話 削減


 女子高生“なお”とのメル友関係は消滅したものの、彼女以外にも、まだメル友はたくさんいた。“なお”や、それ以外のメル友たちとメールを交わしながらも、毎日のようにメル友募集掲示板をチェックして、新しいメル友づくりに励んでいたからだった。
 そんなメル友は、多いときには三十人近くまで増えた。もちろん、すべて女性ばかり。そんなメル友たちは、全国の広範囲に及ぶほどだった。そしてその対象も、主婦だろうがカレシ持ちだろうが構わなくなっていた。

 とにかく、メル友を増やしたかったのだ。

 しかし、さすがにメル友が三十人近くになると、僕も混乱してしまう。誰に、どんな内容のメールを送ったのか、わからなくなってしまうのだ。そのために、送信先の相手を間違えてメールを送ってしまうことも度々あった。

 これではメールを送る方も大変だと、ようやく気づいた僕は、メル友を減らすことに決めたのだった。

 メル友を削減するうえで真っ先に対象になったのは、主婦やカレシ持ちなど、カノジョ候補にならない女性たちだった。次に、メールを送ってもなかなか返事が来なかったりして疎遠になってしまった女性たち、次に簡単に会えそうにない遠距離に住んでいる女性たちだった。ただ、遠距離に住んでいても共通の話題で楽しくメールを交わせるメル友はキープしておくことにした。楽しくメールを交わせるメル友の存在は、毎日の単調な生活に彩りをもたらしてくれるというのが理由だった。




次回、小説『ネット恋愛』の更新は10月21日の予定です。





小説『ネット恋愛』第1章 第14話 イノシシ

   第①章 出会い  

  第14話 イノシシ



 そんなある日の夜、“なお”から思いがけないメールが届いた。

 電話で話してみたい、と。

 これには少し驚いた。もちろん電話で話すことは歓迎だけれど、どちらかと言えば、あまり社交的とは言えない僕にとって“初めての電話”は緊張してしまう。だけど、女性との会話に飢えていた僕は、すぐに了解のメールを送ったのだった。

 すると“なお”はすぐに反応してメールを返信してきた。そこには“なお”のケータイ番号が記載されてあった。

 「電話して、ということか」

 僕は苦笑いしながら呟くと大きく息を吸った。案の定、心拍数が上がってきた。メールでのやりとりを何度もしてきたとは言え、実際に電話での会話となるとやっぱり緊張してしまう。

 僕は思いきって“なお”のケータイに電話を入れてみた。コール音が三回ほど聞こえてから、明らかに女の子と分かる高い声が勢いよく耳に入ってきた。

 「もしもーし?」

 「あ、ヒロだけど・・」

 メールではヒロと名乗っているので、咄嗟にその名前を告げた。

 「ヒロさん、電話では初めましてだね」

 「そうだね。ていうか本当に女の子なんだね」

 緊張気味の僕は思いついたままの言葉を口に出していた。そんな僕の言葉に“なお”は笑った。

 「当たり前じゃん、男の子かと思っていたの?」

 「あ、いや、そういうわけじゃないけど」

 久しぶりの女性、しかも女子高生との会話に緊張していた僕は、とにかく何か話さなければ・・と、と自分の心にムチを打ち続けていた。

 そのとき、ふと疑問が浮かんだ僕は“なお”に尋ねてみた。

 「でもどうして急に電話で話したくなったの?」

 「だってぇ、メールだと返事が来るのを待たないといけないじゃん。だから電話の方がいいかなって」

 そういうことか、と女子高生らしい言い分に僕は納得した。

 普通であれば、常識的な社会人の女性は、知り合ったばかりの男性に対して警戒心を抱くので、そう簡単にはケータイ番号などの個人情報を教えたりはしない。しかし“なお”は高校生だからか警戒心は薄いらしい。だから何のためらいもなく、僕に自分のケータイ番号を教えてくれたようだ。

 それはともかく、初めてのメル友との電話での会話は、最初のうちこそ緊張はしたものの、すでにメールでのやりとりで仲良くなっているぶん会話は弾んだ。やはり“なお”とは電話での会話でもフィーリングが合うようだ。

 そんな“なお”との初めての電話は三十分ほどで終わった。最後に“なお”は明るい声で「バイバイ」と言って電話を切った。

 「本当に女子高生だな」

 僕は微笑みながらそう呟いた。

 電話を切ってまもなくメールが着信した。

 “なお”からだった。すぐにメールを開いてみる。

 『電話ありがとぉね。楽しかったぁ。また話そうね。おやすみなさぃ』

 “なお”からのメールには、毎度のように顔文字や絵文字やらで彩られており、彼女の機嫌の良さが伝わってきた。それを認めた僕は、安堵を感じながらため息をついた。

 良かった、“なお”は僕との初めての電話での会話を楽しんでくれた。もし、つまらなさそうだったら、こっちが残念な気持ちになってしまう。

 やっぱり女の子からは楽しい男だと思われないといけないのだ。それにしても女子高生と電話で話せるなんて、何て美味しい展開なんだろう。

 女子高生に対して、ある種の憧れを抱く成人男性は少なくない。そして、普段の生活の中で、女子高生と知り合う機会などそうあるものでもない。それが今では、メル友募集サイトで知り合って、メールを交わしたり電話で話せるなんて、本当に良い時代になったものだと思う。

 場合によっては女子高生がカノジョになるなんてこともあり得なくもない。

 しかし、僕にとって、女子高生“なお”は恋愛対象ではなかった。だからとくに会いたいとも、電話でもっと話がしたいとも思わなかった。

 それにしても不思議なもので、世の中の男にとって、下心を抱かない対象の女性とは仲良くなれるのに、下心を抱く対象の女性には逃げられる傾向がある。やはり女性には、男の下心を感知する防衛本能的な能力が備わっているのだろうか?

 僕は“なお”には下心を抱いていない。むしろ、妹のような存在だからこそ気楽にメールを交わせる。それに“なお”とは考え方や趣向が合っているのだろう、彼女とは色々な話題でメールや電話での会話を交わすことができた。

 例えば、音楽の話題。

 僕も“なお”もボン・ジョヴィが好きで、なかでも『イッツ・マイ・ライフ』という曲は、お互いにとって大のお気に入りだった。だから電話での会話中に、二人でサビの部分を一緒に歌ったものだった。

 そんな“なお”との楽しいメールと電話での会話は二週間ほど続いた。しかしそんな楽しい日々も、終わりを迎える日が近づいてきた。



 いつしか僕は、女子高生“なお”に対して少なからず好意を抱くようになっていた。そしてその気持ちは“なお”に会ってみたい、という好奇心を呼び起こした。

 “なお”は可愛いのかな?どんな顔をしているのだろう?なんだか会ってみたくなってきた・・。

 そしてついに僕は“なお”との電話での会話中に、会ってみたい気持ちを伝えたのだった。

 「なおに、一度会ってみたいな」

 「えー?恥ずかしいよ」

 「なんで?恥ずかしがることないじゃん」

 「え?マジで言ってるの?」

 「うん、なおがどんな顔してるのか見てみたい」

 “なお”に会いたいと伝えてしまった僕は、まるでイノシシのように脇目も振らずに『会いたい』気持ちを背負って突進を始めた。そして、すでに突進を始めてしまった僕には“なお”の女心を察する余裕など全く失っていたのだった。

 「一度くらい良いじゃん。会おうよ」

 「だって恥ずかしいもん。メールや電話だけじゃダメなの?」

 「実際に会って話をしてみたいんだよ」

 「でも・・・」

 ついに“なお”は黙り込んでしまった。それでも僕は何とか“なお”から会う約束を引き出そうと必死になった。走り出したイノシシは、もう止められなかった。

 「僕は、なおのこと、友だちとして好きだよ」

 「私も、ヒロさんのこと友だちとしては好きだよ」

 「だったら会おうよ」

 「でも私、他に好きな人がいるの」

 僕は、その“なお”の答えに少なからずショックを受けた。

 「好きな人って、同級生とか?」

 「うん。まだ片思いだけど好きなの」

 「そっか・・。でも僕のことも友だちとして好きなんでしょ?だったら会おうよ」

 自分でもしつこいと思ったものの強引に押してみた。すると“なお”は再び黙り込んでしまった。もしかしたら前向きに考えてくれているのかもしれない。僕は“なお”からの返事を待った。

 「ごめんなさい、やっぱりヒロさんには会えない」

 「そっか・・」

 “なお”の返答に今度は僕が黙り込んでしまった。二人の間にはケータイを通して重い空気がよどみ始めた。そしてまもなく“なお”が重々しい口調で沈黙を破った。

 「じゃあ私、そろそろ寝るね。おやすみなさい」

 「あ、おやすみ・・」

 明らかに気まずいなかでの会話終了だった。

 僕は折りたたみ式のケータイをパタンと閉じると深いため息をついた。

 そっか、会えないなら、もうこれ以上は電話代を使ってまで話す必要はないな。

 僕の頭の中は打算と失望感でいっぱいになっていた。

 それ以来“なお”とメールを交わすことは極端に少なくなっていき、電話で話すこともなくなった。僕は疎遠となった“なお”との関係をとくに気にすることはなかった。やがて二人の純粋なメル友関係は自然消滅したのだった。








◎ 次回、小説『ネット恋愛』の更新は10月18日の予定です





小説『ネット恋愛』第1章 第13話 女子高生

 第①章 出会い  

第13話 女子高生


 東西線葛西駅前の書店から南葛西のアパートまでの徒歩十五分の道のりを、僕は、ミリアンとの思い出に浸りながら歩いた。思い出に浸りながらの十五分は、時間を感じさせなかった。

 アパートに戻るとすぐに、アルバムの中からミリアンの手紙が入っている封筒を取り出した。そして、ミリアンからの手紙と写真を取り出した。写真には、南米の仲間たちと一緒にミリアンと僕が写っている。

 みんな笑顔だ。ミリアンも僕も楽しそうに笑っている。

 僕は懐かしさを感じながら、写真のミリアンの顔を見つめ続けた。今の僕には、ミリアンと別れたときの寂しさや悲しみはない。ただあるのは、素敵な思い出と微笑ましい懐かしさだけだった。

 「ミリアン・・」

 僕は久しぶりに、愛しかったミリアンの名前を一度だけ呟くと、手紙と写真を慎重に封筒の中に戻した。そして、ミリアンからの手紙という大切な宝物を、アルバムに挟んで閉じたのだった。

 ミリアンとの出逢いに匹敵するほどの運命的な出逢いをしたい。

 こうして僕は、再びケータイに手を伸ばしたのだった。



 アルバイトが休みである日曜日の夜。僕は、アパートの室内でベッドに横たわりながら、ケータイの画面を食い入るように見つめていた。その視線の先はメル友募集掲示板だった。

 僕はカノジョづくりに必死になっていた。メル友を募集をしている女性たちの書き込みを見つけると、片っ端から挨拶と自己紹介のコメントを書き込んでいった。

 もう、メル友を募集している女性が住んでいる場所なんて気にしなかった。日本国内であれば良いのだ。地球の裏側であるブラジルと比べたら、日本国内なんてどれだけ近いことか。ただ、明らかに既婚者と分かる人やカレシ持ちの女性にはコメントを残さなかった。

 僕は人妻との不倫やカレシ持ち女性の浮気相手をしたいわけではないのだ。

 カノジョが欲しいのだ。

 だから、極論すれば、カノジョがいない男にとって“他人の女”は“女”の価値はないのだ。

 でもセックスできるのなら“他人の女”でも良いかな・・という下心を、自分の心の中に感じたけれど、すぐに心の中から追い払ったのだった。

 世の中には熟女を好む男が少なくないけれど、個人的には熟女には興味なかった。

 興味があるのは同じ世代か、年上でもせいぜい五つ上あたりまで。年下なら二十歳以上。三十歳以上や中高生は論外なのだ。

 しかし、メル友の数が増えていくにつれて女子高生のメル友ができてしまった。その女子高生とはメル友募集掲示板で知り合った。ただそれは、実際にケータイ同士の直メールを交わすようになってから、相手が女子高生だと分かったのだ。正直、相手が女子高生だと知ったときは、メールを続けることにためらいを覚えた。しかし、ためらいながらもメールを交わしているうちに、女子高生とはフィーリングが合うことに気づいた。それ以来、毎日のようにメールを交わすようになったのだった。



 メル友の女子高生は千葉県浦安市に住んでいた。そこは僕が住む江戸川区のすぐ隣だった。会おうと思えばすぐに会える距離である。  

 しかし、不思議と会いたいとは思わなかった。いや、会う会わない以前に、女子高生からしたら二十三歳の僕なんて“オッサン”扱いされかねないことを考えたら、会うことを前提になんて僕自身も考えられなかったのだ。だから『会いたい』という言葉は使わなかったし、エッチな話に誘うことも誘う気もなかった。

 正真正銘の純粋なメル友だったのだ。

 そんな女子高生のメル友の名前は“なお”と言い、本名かどうかは分からない。でもそんなことはどうでもよかった。

 そんな“なお”とはフィーリングが合ったからこそメールが続いたわけだけど、実際に会ったわけでもないのにフィーリングが合うと感じられるのには理由があった。

 メールは言葉のみのコミュニケーションだけど、絵文字や顔文字などを使うことで感情を表現できる。それは送り手の気持ちをより明確に表現できることを意味する。実際、僕も“なお”も絵文字や顔文字を頻繁に使っていた。それがお互いの気持ちを明確に伝え合うことになり、円滑なコミュニケーションに繋がったのだと思う。もちろん話題が合う必要もあれば、お互いの“ノリ”が良いことも条件にあった。だから“なお”とのメールは楽しかった。それに変に下心を抱くこともなかったからこそ、楽しいメールが続いたのだと思う。



(次回、小説『ネット恋愛』の更新は10月15日の予定です)







小説『ネット恋愛』第1章 第12話 手紙

 第①章 出会い  

第12話 手紙


 ミリアンの母親からの伝言を受け取った日以来、すっかり気持ちが暗くなった僕は、ミリアンたちが働く“南米のフロア”へ行くことはなくなった。ミリアンに会うと悲しくなるのが理由だった。
すっかり元気がなくなって口数も減ってしまった僕を、同じ日本人の仕事仲間たちが僕を慰めようと飲みに誘ってくれたりしたけれど、心が晴れることはなかった。

 それはミリアンも同じだったらしい。

 時々、遠くから見かけるミリアンは明らかに元気がない様子で、南米の仲間たちと一緒にいてもひとり沈み込んでいるような姿が印象的だった。

 そんなある日の朝、物流センターの一階入口で、不意にミリアンと目が合った。ミリアンは微笑みながら黙って僕を見続けていたけれど、僕は「ボン・ジーア」と挨拶だけしてすぐに目を逸らして通り過ぎてしまった。

 別にミリアンのことが嫌いになったわけではない。ミリアンのことが愛しくて仕方がなかったからこそ、その存在を間近に感じることが辛くて切なかったのだ。

 近々、ミリアンはブラジルに帰る。

 それは東京と大阪といった日本国内の距離で離れてしまうのとは訳が違う。ミリアンは地球の裏側へと去ってしまうのだ。同じ時刻に、同じ太陽や月さえ眺めることができない地球の裏側にあるブラジルに。

 僕はミリアンを追って地球の裏側にあるブラジルへ移住しようかと考えてみた。しかしブラジルに関する情報を集めているうちに、移住と、その後の生活は、現実的に極めて厳しいという結論に達した。ポルトガル語をまともに話せないうえブラジル社会のことをよく知らない日本人が、ブラジルでまともな仕事に就いて生きていけるのだろうか?それにもしも、ミリアンと仲違いしたらブラジルで生きる意味がなくなる。一時の感情だけで大金とリスクを賭けて地球の裏側まで行くことはできなかった。

 だから諦めるしかなかったのだ。



 ミリアンと逢うことがなくなってから一週間ほど過ぎた日のこと。僕たち日本人が働く倉庫内のフロアに、突然、ミリアンが現れた。ミリアンが自分から、僕が働くフロアに現れるなんて初めてのことだった。

 フロアの入口から作業場の僕を恥ずかしそうな表情で見つめているミリアンに気づいた僕は、何か用件があるのだと察して彼女に駆け寄った。

 「ボン・ジーア、トゥードゥ・ベイン?」

 僕は久しぶりに間近で見るミリアンに微笑みながら『おはよう、元気してる?』と尋ねた。ミリアンは恥ずかしそうに微笑みながら頷いた。そして手に持っていた封筒を無言で僕に差し出した。どうやら手紙らしい。

 ミリアンからの手紙を受け取った僕は、あまりにも予想外で突然の出来事に驚きつつも、まだ愛しくて仕方のない彼女からの手紙に嬉しくなった。そして照れながらミリアンを見つめた。僕に見つめられた恥ずかしがり屋のミリアンは、顔を少し赤らめながら目を伏せてうつむいた。そして再び僕を見上げると、ミリアンの顔が僕のすぐ目の前にまで近づいた。

 次の瞬間、僕の唇に温かく柔らかな甘い感触が広がった。僕の唇に一瞬のキスをしたミリアンは、優しさと寂しさを湛えたような瞳で僕を見つめた。そして「ヒロ、アリガト」と言い残して足早にフロア入口から出て行ったのだった。階段を下っていくミリアンの足音と一緒に微かに鼻をすする音が聞こえてきた。

 それが最後に見たミリアンだった。



 ミリアンからの手紙を受け取った日、アパートに帰宅するやすぐにポルトガル語辞書を片手に、彼女直筆によるポルトガル語の手紙を翻訳しながら読んだ。

 『親愛なるヒロアキ。短い間だったけれどヒロアキと過ごした時間は楽しかった。でも私はブラジルに帰らないといけない。本当は、このまま日本に居たかった。私はブラジルに帰ってもヒロアキの幸せを願っています。ヒロアキ、あなたと知り合えて良かった。あなたは、いつまでも私の大切な友だちです』

 手紙の文末のポルトガル語、アミーゴという言葉を見つけたとき、僕の両眼から涙が溢れ出てきた。その涙は悲しみや寂しさからもたらされたものではなく、嬉しさからだった。

 ミリアンはブラジルへ帰国する。おそらくもう二度と逢うことはできないだろう。それでもミリアンは僕を大切なアミーゴ(友だち)として想ってくれているのだ。そして何よりも、ミリアンの想いを綴ってくれた手紙をもらうことができた。もしミリアンが僕に対して何の気持ちも抱いていなければ、このような手紙を書いたりはしないはずだ。

 そんなミリアンの気持ちが嬉しくて涙が溢れ出たのだった。



 それからまもなく、ミリアンがブラジルへ帰国したと南米の仲間たちから知らされた。母国へ戻ったミリアンを追うつもりはなかったけれど、それからまもなくして僕も職場を去った。

 ミリアンがいなくなってしまった職場には空虚さしか感じられなくなったからだった。同僚の日本人や南米の仲間たちは楽しい人たちではあったけれど、ミリアンという愛しい存在を失って心にポッカリと穴が開いてしまっている僕には、誰にも、何をもってしても埋めようがなかった。

 滅多に一目惚れをしない僕が、ミリアンに魂を奪われるほどの一目惚れをして瞬く間に恋に落ちたのは、いま思えば、運命だったと確信できる。そしてこのような別れ方をしたのもまた運命だったと思う。

 ミリアンとは結ばれることはなかったけれど、彼女は間違いなく、僕の運命の人だったのだ。



(次回、小説『ネット恋愛』の更新は10月12日の予定です)



 

小説『ネット恋愛』第1章 第11話 伝言

第①章 出会い  

 第11話 伝言

 
 ミリアンへ告白した日は土曜日だった。

 翌日の日曜日は仕事が休み。そしてその翌日の月曜日に出勤した日のことだった。

 昼休み、いつものようにミリアンがいる三階フロアへ行くと、僕を見る南米の人たちの雰囲気がいつもと違っていた。ミリアンの姿もなかった。僕が拍子抜けしたように突っ立っていると、一人の男性が近づいてきた。

 フィデルだった。

 フィデルはペルーからやってきた労働者で、僕より五歳年上。日本語が堪能で陽気な性格なので、僕ともすぐに親しくなった。そんなフィデルが沈痛な面持ちで僕に近づいてきたのだ。僕は何か嫌な予感がした。

 フィデルは、僕の正面に立つと流暢な日本語で話しかけてきた。その口調は重々しい。

 「ミリアンのお母さんから伝言があります」

 「ミリアンのお母さんが僕に?」

 「はい。伝えてくださいと言われました」

 そういえば、ミリアンと一緒に働いている彼女の母親の姿も見えない。

 フィデルは話を続けた。

 「ミリアンは、またブラジルに帰ります。家族みんなで帰ります。だからミリアンだけを日本に残すことはできません」

 それを聞いた僕の呼吸が一瞬止まった。しかしすぐに短く息を吸い込むと早口でフィデルに尋ねた。

 「いつブラジルに帰るの?」

 「わかりません。だけど、それは近いです」

 僕はショックで黙り込んでしまった。

 ミリアンは日系人として日本に永住していると思い込んでいたため、ブラジルに帰るなんて思ってもみなかったからだ。ミリアンとその家族は就労のために、一時的に日本に滞在しているだけだとフィデルに知らされたのだった。

 ショックでうつむいて黙り込んでしまった僕にフィデルは同情したのか、僕の左肩を軽く叩くと何も言わずに僕から離れ始めた。

 「フィデル」

 僕がフィデルの名前を呼ぶと彼はこちらを振り返った。

 「今日、ミリアンは休み?」

 「休みですね」

 「病気じゃないよね?」

 「はい。用事で休んでいます」

 「そっか。フィデル、わざわざ伝えてくれてありがとう」

 僕は力なく微笑みながらフィデルに礼を言うと、フィデルも微笑みを浮かべて頷き、そして去って行った。フィデルが立ち去ったあと、僕もすぐに“南米のフロア”をあとにしたのだった。



 ショックだった。

 本当にショックだった。

 こんなにミリアンのことが大好きなのに。それなのに、どうして?

 アルバイトを終えて帰途に就くなか、京葉線電車内の僕は、乗降扉に全身を預けるようにもたれかかりながら、車窓から見える灰色のマンション群を茫然自失となって見つめていた。

 ミリアン・・

 愛しいミリアンの笑顔を思い浮かべたとき、見つめていた風景は瞬く間に遠のき、右目からは一滴の涙がこぼれ落ちた。

 葛西臨海公園駅で下車してから、アパート近くにあるコンビニまでの徒歩十五分の道のりは、まったく距離を感じさせなかった。

 コンビニへ入った僕は、好きでもないお酒であるブルーハワイを買うと、隣接する総合レクリエーション公園に入った。そして公園の街灯に照らされた冷たそうなベンチに腰を下ろした。

 ベンチに座るとすぐにビンの蓋を開けて、淡い青色の液体であるブルーハワイを口に流し込んだ。味なんてどうでもよかった。とにかく心の中に溜まっている悲しさと重苦しさを流し去ってしまいたかったのだ。

 太陽が完全に沈み込んで薄暗くなった空には、すでに満月が昇っていた。

 「ミリアン・・」

 僕は満月を見上げながら愛しい人の名前を呟いた。そしてさらに美味しくないアルコールを口に注ぐ。一息では飲み干せないお酒を、僕は鼻をすすりながら何度も何度も口に注ぎ込んだ。

 でも酔えない。

 普段からお酒を飲んでも陽気になれない僕には、アルコールを口から注ぐことなど自棄酒を飲んでいるという自分自身へ向けたパフォーマンスでしかなかった。そんなことをしても自分の心が晴れることなどないと十分に分かっていた。だけど何かしないことには、この重苦しい悲しみから逃れ得ようがないのだ。

 アパートに戻ってすぐにベッドに伏した僕は、自分だけの空間へ戻ってきたことで感情をストレートに吐き出した。そして男ながらに泣いた。隣の部屋との壁の厚みが薄いことなど気にすることなく、声をあげて泣いた。

 心の中で、男のくせにこんなことで泣くなんて・・という冷たい理性の声が聞こえてきた。だけど僕は悲しみの感情に抵抗することなく、ただ素直に泣き続けた。泣きながら両手で鷲掴みにした毛布がいつもより柔らかく感じた。悲しみで胸が張り裂けんばかりの僕にとって、いま両手で掴んでいる毛布だけがこのうえなく優しく感じた。そして、いつのまにか僕は眠りに就いていたのだった。



(次回、小説『ネット恋愛』の更新は10月9日の予定です)







小説『ネット恋愛』第1章 第10話 ミリアン

第①章 出会い  

第10話 ミリアン


 二年前の初夏、東京・若洲にある物流センターの倉庫でアルバイトをしていた僕は、ミリアンという名前のブラジル人女性に一目惚れをした。
 あの日、作業場のある五階からエレベーターで降りているとき、三階からそれに乗り込んできたミリアンを一目見た僕は、思わず固まってしまった。彼女を見た瞬間、僕の理性は無力化されて瞳孔は完全に見開き、魂そのものが彼女という存在に引き込まれてしまったのだ。

 ミリアンはブラジル人といっても日系四世であり、外見的には日本人と変わらなかった。ただ、ブラジルで育ってきたせいか肌が若干浅黒く、ウェーブのかかった肩まで伸びる長い黒髪はブラジル人らしさを感じさせた。そして彼女の瞳は大きくて美しく、僕には魅惑的だった。そんなミリアンは十八歳で、家族と共に来日して横浜に住み、彼女の母親と一緒に同じ職場で働いていた。

ミリアンが働く物流センターの三階では、海外の日系人や南米の人々が派遣スタッフとしてグループを成して働いていた。そのせいかミリアンは日本語をあまり話せなかった。

 ミリアンに一目惚れしたことで情熱的なアプローチを始めた僕は、日本語が話せない彼女と会話するために、彼女の母国語であるポルトガル語を独学で学び始めた。しかし、すぐにポルトガル語をマスターできるわけではない。そのため、ミリアンと話すときは、日本語を話せる彼女の仕事仲間に通訳してもらうしかなかった。しかしそれでは、踏み込んだ内容の会話はできないので口説くことさえままならない。それに通訳してくれるミリアンの仕事仲間のことを考えると、僕ら二人の会話のために貴重な休憩時間を奪ってしまうようで心苦しい。

 そう思った僕は、職場に日葡辞書を持っていき、辞書を交えながらミリアンとの二人だけの会話を試みた。しかしそれでも大した内容の会話はできず、そのためミリアンが困惑した表情を見せることも少なくなかった。

 やがて僕は、三階で働く南米の人たちの間で話題の人となった。

 ブラジルの女の子を口説こうとしている日本人がいる、と。

 しかし、その好意的な話題がきっかけとなって南米の人たちとも仲良くなった僕は、昼休みに物流センターの駐車場で彼らとサッカーをするようになった。そして南米の人たちと駐車場でサッカーを始めると、ミリアンたち南米の女性たちも駐車場の端に集まって、おしゃべりをしながらサッカー観戦をするようになった。

 そんなある日のこと、いつものように職場の駐車場で南米の仲間たちとサッカーをしていると、ボールが駐車場の端にいるミリアンの方へと転がっていった。ボールはミリアンの足元に転がり、そして止まった。僕がボールを追いかけてミリアンの足元にあるボールを拾い上げると、彼女と目が合った。その瞬間、ミリアンは恥ずかしそうに何か言葉を発しながら両手で自分の顔を覆った。そんなミリアンの様子を見ていた彼女の友人たちは、にこやかな笑い声をあげたのだった。

 僕と突然目が合っただけでこんなに恥ずかしそうな反応をするなんて、今どきの日本人女性には滅多に見られないのじゃないかな。

 僕は、そんなミリアンに純情さを感じて、さらに惚れ込んだのだった。

 そんなミリアンと知り合って一カ月ほど過ぎた日のこと。僕は、職場での昼休みに、誰もいない五階のフロアへミリアンを連れて行った。

 休憩時間で誰もいない静かな倉庫内で、僕はミリアンの大きくて美しい瞳を黙って見つめた。不思議そうな表情を浮かべて僕を見ているミリアンを見つめながら、僕はポルトガル語を発した。

 「ゴスト・ジ・ヴォセッ」

 ポルトガル語で『君が好きだ』と伝えた。

 僕からの告白を受けたミリアンは、恥ずかしそうに微笑みながら頷いて何やら短い言葉を発したけれど、聞き取れず理解できなかった。

 「僕のこと、嫌い?」

 ミリアンの反応に少しばかり不安を覚えた僕は、ポルトガル語で尋ねてみた。すると、ミリアンは「ナォン」と否定しながら首を大きく左右に振った。そして照れたような表情を浮かべながら黙って僕を見つめ続けていたのだった。

 結局、ミリアンへの告白の結果は、彼女の発した言葉が僕には理解できず、その気持ちも分からないままだった。だけど、誰もいない五階フロアでの二人だけの時間は幸せに満ちていた。しかしそんな幸福感は、突然終わりを告げることになる・・



(次回、小説『ネット恋愛』の更新は10月6日の予定です)




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