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Novel Creator として創作活動しています。小説『ネット恋愛』・・・3の倍数日に連載中☆ミ・・・☆

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小説『ネット恋愛』第1章 第1話 回想

ネット恋愛







  第一章 出会い

第1話 回想



 二○一四年、東京・葛西臨海公園



 ふらり、と散歩にやってきた僕は、東京湾を一望できるベンチに腰を下ろした。そのとき、袖をまくりあげた左腕の前腕部にナイフの傷跡を認めたものの、まったく意に介すことはなかった。

 ベンチの正面には遊歩道をはさんで柵越しに海面が広がっている。そしてはるか遠くには、何隻もの貨物船がまるで止まっているかのように見える。

五月の空は青く澄んでいて日差しも優しく、しばらくベンチに座っていても暑さに追い立てられることはなさそうだ。

 いま、妻は三歳の娘を連れて買い物に出かけている。その間、江戸川区南葛西の自宅マンションから葛西臨海公園まで歩いて出てきたわけだが、環七通り沿いの歩道は馴染みすぎた風景なため退屈に感じた。しかし葛西臨海公園の敷地内に足を踏み入れると、僕の視界は大きく広がり始める。さらに僕の視界に東京湾が入ることで口元が緩み始める。そして海辺にある、お気に入りのベンチに座ることで散歩の目的地に到着できるのだった。

 散歩の目的地に到着した安堵感で心身ともに落ち着いた僕は、ぼんやりと海を眺め始めた。

 そのとき突然、ピロリンと音がして上着の内ポケットから微弱な振動を感じた。僕は内ポケットからスマートフォンを取り出すと、その画面からメールの着信を認めた。そしてすぐに画面上のメール・アイコンを人差し指でタップして受信メールを確認する。メールは妻からだった。

 さっそくメールを開いて読んでみる。

 『今夜はカレーにするけど、ビーフとシーフード、どっちがいい?』

 どちらでも良いのに、と思ったものの、妻は、僕がビーフもシーフードも好きなことを知っているからこそ気を利かして尋ねてくれたのだ。そんな妻に愛しさを感じて思わず微笑んだ僕は、素早い指先の動きでメール文章を作成して妻に返信した。

 『シーフードでいいよ。ありがとね』

 妻にメールを送信したあと、思わずスマホの画面を見つめた。

 思えばケータイも進化したものだ。画面に指を触れるだけでメールを作成したり動画を見たり、いとも簡単にインターネットにアクセスして、スマホひとつで様々な情報を収集できる。さらに、スマホに搭載されたカメラで撮影した画像を編集して、送信までできるのだから。

 今から十五年ほど前のケータイといえば、通話とメールの送受信、そして簡易なインターネットができるくらいの代物だった。当然、カメラ機能なんて搭載されていなければ、画像を送信することもできなかった。おまけに画面は白黒で、絵文字も現在ほど豊富ではなかった。それでも当時の僕たちにとっては画期的なアイテムであり、コミュニケーションに欠かせない重要なツールだったのだ。

 やがて手軽にメールができるようになったことで、ケータイからアクセスできる簡易インターネットには『メル友募集掲示板』や『チャット』などのサイトが生まれた。それは現在では『出会い系サイト』と呼ばれ、時には犯罪の温床となることがある。そのため『出会い系サイト』は、いかがわしいものとして受け止められがちだ。しかし当時の、まだ初期のメル友募集掲示板は純粋にメル友を作るためのサイトであり、現在でいう『サクラ』などは存在せず、しかも完全に無料だった。そしてそれは確かで安全なサイトであり得たのだった。

だから当時の僕は、そういったメル友募集掲示板に対して何ら警戒することなく利用して、数多くのメル友を作ったものだった。やがてそんなメル友募集掲示板は、出会いを求める者がメル友をきっかけとして恋人を作る手段となり、そしてそれはネット恋愛が世間に広がるきっかけとなっていった。

「そう、あの頃の僕はネット恋愛に夢中になっていたのだ・・」

僕は、左腕に残るナイフの傷跡を見つめながら、十五年前の出来事に思いを馳せたのだった。









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