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Novel Creator として創作活動しています。小説『ネット恋愛』・・・3の倍数日に連載中☆ミ・・・☆

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小説『ネット恋愛』第1章 第7話 内面の美しさ
第①章 出会い  

第7話 内面の美しさ


 “りな”の件で重い気持ちになっていた僕は、ゲームセンターへ行くことにした。
ケータイをジーンズの後ろポケットに突っ込み、ワンルームの玄関からアパート三階の通路に出る。ふと空を見上げると真っ青で雲ひとつなかった。

 まさに快晴。

 五月初旬の気候は穏やかで、暑さをあまり気にしないで外出できる。こんな爽やかな天気の日は、まさに外出日和、デート日和だ。

 こんな日は可愛い女の子とデートしたいな。でも誘える女の子さえ、いない。

 アパートの金属製の階段をコンコンと音を立てて下りながら“りな”のことを思い出してしまった僕は、頭上の素晴らしい青空のことなどすぐに忘れてしまった。そして再び彼女のことばかりを考えてしまい気持ちが暗くなったのだった。

 南葛西のアパートを離れた僕は、近所のレクリエーション公園を横切ると環七通りの歩道に出た。

 東西に延びるレクリエーション公園と南北に延びる環七通りが交わる交差点にはドーナツ屋がある。僕はドーナツ屋を認めると歩きながら懐かしげにそれを見つめた。

 去年までアルバイトをしていたドーナツ屋。あの頃に好きだった仕事仲間のあの子は、新しい職場で元気にしているかな。とても可愛くて客や従業員からも人気があったから、今頃は新しいカレシができているんだろな・・

 ドーナツ屋でアルバイトしていた頃の、あの年下女性との“恋の駆け引き”を思い出してひとり微笑みつつも、それに失敗して告白もできずに終わってしまった切ない恋の結末を思い出して苦い気持ちになった。

 あぁ、せっかく気持ち良く広がる青空の下を歩いているのに気持ちが暗くなるばかりじゃん。とにかく葛西臨海公園の駅を目指そう。

 僕は黙々と歩き続けた。



 僕が住むアパートは、地下鉄東西線・葛西駅とJR京葉線・葛西臨海公園駅のちょうど中間あたりにあった。だからどちらの駅から利用しても都心へ行ける。

 今日は新宿のゲームセンターまで行くことに決めていたので、本来なら葛西駅から東西線を利用するのが手っ取り早い。しかし今日は、あえて葛西臨海公園駅からJRで新宿まで行くことにした。

 物思いに沈みたいときは、車窓を流れる景色を見つめながら移動するに限る。そんな理由からだった。



 京葉線電車に乗り、乗降ドアにもたれかかるように突っ立っていた僕は、京葉線と並行して走っている首都高速湾岸線を行き交う車をぼんやりと見つめていた。

 考えることといえば、メル友の“りな”を相手にエッチ話を持ちかけてしまったという後悔ばかり。もうそんなことを考えたくないのに、いつまでもクヨクヨと考えてしまうのが僕の悪いところなのだ。

 やがて電車は潮見駅を過ぎて地下へと潜り、車窓には暗く沈んだ男の顔が映った。

 なんて暗い顔をしてるんだろう。

 そんな自分の表情なんて見たくない僕は、背負っているリュックサックから文庫本を取り出すと、とりあえず読み始めた。

 文庫本は中国の歴史の本。

 僕は、歴史や戦記物の書籍が好きなので愛読している。だけど、小説、とくに恋愛小説にはまったく興味がないから読まない。

 そもそも他人の恋愛には、あまり興味がないのだ。恋愛小説に限らず、恋愛を扱ったドラマや映画にもあまり興味がない。そして、街で仲睦まじい恋人たちを見かけると、嫉妬心で腹が立って顔をそむけてしまうありさまなのだ。

 だからといって僕にまったく恋愛経験がないわけではない。小学生の頃からそれなりの恋愛経験はしてきた。しかしそれは決して多くはなかった。

 せっかく開いた歴史の文庫本も、頭の中に延々と湧いてくる雑念のせいで集中して読むことができず、すぐに閉じてしまったのだった。



 東京駅で京葉線電車を降りた僕は、長い通路を歩いて地上のホームに出た。そして山手線電車に乗ると新宿へ向かった。

 今日は日曜日だけあって、やっぱりカップルが多い。おしゃれな服装のカップルたち、まさに流行の最先端を行っている感じだ。

 電車内で、目の前にいるカップルをチラチラと見ながら、僕はチャットでの話題に乗れないばかりか、流行のファッションにも乗り遅れているのだと感じて暗い気持ちになった。しかし僕は、流行やおしゃれにはあまり興味を持てないのだ。ましてやアクセサリーを身につけることに意味を感じられない。外見だけ飾って何が良いのだろうと思ってしまう。

 人間は内面の美しさが大切なんだ。

 外見的なおしゃれだけして内面が美しくなければ虚しいだけじゃないか。

 僕は、そんな批判を込めた冷たい視線で目の前のカップルを見続けた。するとカップルの男性と目が合ったので僕は慌てて目を逸らした。

 内面の美しさが大切だと言っている僕も、内面が美しいとは言いきれない。メル友づくりに励んでいる理由なんて、正直言って、ただ女の子と“やりたい”だけじゃないか。だからメル友だった“りな”にエッチ話を持ちかけて嫌われるんだよ。女の子だって馬鹿じゃない。相手にしている男が下心を抱いているとわかればすぐに拒絶するだろう。だけど、たかがエッチ話を持ちかけただけじゃないか。いきなりメールアドレスを変えるなんて酷すぎる。

 そう思った途端、僕は“りな”に対して腹が立ってきた。

 まぁ、いいや。“りな”なんてどうせ可愛くないに決まってる。実際に会ったとしてもガッカリするだけだ。あんなのとは関わらなくて良かったんだ。

 ついに僕は、自分の失敗を棚に上げて怒りの矛先を“りな”に向けて、陰湿になってしまったのだった。そしてすぐにそんな自分の姿に気づいた。

 これでは僕も、内面が美しいとは言えないよな、絶対。

 僕は、すっかり自己嫌悪に陥ってうつむいてしまったのだった。


(次回、小説『ネット恋愛』の更新は9月27日の予定です)




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