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Novel Creator として創作活動しています。小説『ネット恋愛』・・・3の倍数日に連載中☆ミ・・・☆

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小説『ネット恋愛』第1章 第8話 エース・パイロット
第①章 出会い  

第8話 エース・パイロット



 新宿駅で下車した僕は、歌舞伎町にある行きつけのゲームセンターへ入った。そこには、いま夢中になっているシューティング・ゲームがあるのだ。それは戦闘機のコクピットに似た形をした座席に座って操縦桿を制御しながら、まるで戦闘機で空中戦を行っているような感覚を味わえる体感ゲームでもあるのだ。

 僕は、この戦闘機の体感ゲームが大好きで得意でもあった。そして、常にスコアはトップだったので、このゲームを終えると自信に溢れて満足感を味わうことができるのだ。

 そう、このゲーム世界における僕は、他の追随を許さないエース・パイロットなのだ。

 そんなエース・パイロットの僕は、ゲームセンター店内で可愛い女性店員を見つけた。

 女性店員の髪は茶色かかった黒髪で肩あたりまで伸びている。少しばかりシャープな印象がありながらも大きくて綺麗な瞳、まさに僕の好みのタイプだ。

 そんな女性店員は赤と黄の明るい色彩の制服を着て、おとなしそうにカウンターに立っていた。

 可愛いな、と思いながらカウンターから離れた場所で女性店員を眺めていると、僕の視線に気づいた彼女と目が合った。目が合って動揺した僕に対して、女性店員は微笑みながら軽く会釈をしてくれた。僕も照れ笑いを浮かべながら軽く会釈を返した。

 もしかしたらあの子、僕に気があるのかもしれない。

 なんとか仲良くなりたい。話しかけてみようかな?だけどいま彼女は仕事中だから話しかけるのは気が引けるし、周りからナンパしていると思われるのは恥ずかしい。だったらメル友になってくれるようにお願いしてみよう。彼女がメル友になってくれたら、あとはメールを交わし続けるだけで仲良くなれるだろう。

 僕は背負っているリュックサックからメモ帳とペンを取り出した。ちなみにこのリュックサックは、仕事先へ必ず持っていくこともあり、メモ帳やペンなどが常備されているのだ。

 僕は取り出したメモ帳を開いて自分のメールアドレスを書き込むと、そのページを指先でちぎった。そしてそれを手にカウンターの女性店員に近づくとおもむろに差し出した。

 「よかったらメールください」

 緊張で顔を少し強張らせた笑顔でそう伝えながら、メールアドレスが書かれたメモ帳の切れ端を女性店員に渡した。それを受け取った女性店員は黙ってメモ帳の切れ端を見つめた。そんな様子を認めた僕は、恥ずかしさのあまり足早にカウンターから離れたのだった。

 急ぎ足でカウンターから離れて数秒後、僕は振り向いて女性店員の反応をうかがってみた。すると、なんと女性店員は、僕が渡したばかりのメモ帳の切れ端を、無表情のまま無造作に丸めてカウンター脇のゴミ箱に捨ててしまったではないか。僕はショックで唖然としたけれど、すぐに我を取り戻してゲームセンターの出入り口に向かって足早に歩き始めた。僕の心の中は屈辱感でいっぱいになった。

 こうして、先ほどまで自信に溢れていたエース・パイロットは、いとも簡単に“撃墜”されて心まで折れてしまったのだった。



 “撃墜”されてから三十分後、僕は人気(ひとけ)の少ない新宿中央公園のベンチに座っていた。そして、ぼんやりと正面を見つめたまま、先ほどのゲームセンターでの出来事を思い返していた。

 てっきりあの女性店員は僕に気があると思っていたのに・・。僕に投げかけてくれた笑顔は単なる営業スマイルだったのか。これだからうわべだけの営業スマイルは嫌いなんだ。勘違いしてしまうから。

 僕は黙って空を見上げた。公園内の木々の合間に見える空には、いつのまにか灰色かかった大きな雲が認められた。

 さっきまであんなに晴れていたのに曇ってきたぞ・・。

 だらしなく口をぽかんと開けて曇りゆく空を見上げていると、僕の目の前を、男女のカップルが手をつないで幸せそうな雰囲気を醸し出しながら通り過ぎて行った。

 そんなカップルの後ろ姿を黙って見つめていた僕は、大きくため息をついて頭を垂れた。すると僕の靴の近くでアリが一匹、落ち着きなさそうに右往左往しながら歩いているのを見つけた。そんなアリを見つめていると、なんだか自分自身を見ているようで情けなくなってしまった。

 「帰ろう・・」

 僕はひとり呟くと、足元のアリを潰さないように気をつけながら立ち上がった。そして新宿駅へ向かって歩き始めたのだった。


(次回、小説『ネット恋愛』の更新は9月30日の予定です)






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