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Novel Creator として創作活動しています。小説『ネット恋愛』・・・3の倍数日に連載中☆ミ・・・☆

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小説『ネット恋愛』第1章 第10話 ミリアン

第①章 出会い  

第10話 ミリアン


 二年前の初夏、東京・若洲にある物流センターの倉庫でアルバイトをしていた僕は、ミリアンという名前のブラジル人女性に一目惚れをした。
 あの日、作業場のある五階からエレベーターで降りているとき、三階からそれに乗り込んできたミリアンを一目見た僕は、思わず固まってしまった。彼女を見た瞬間、僕の理性は無力化されて瞳孔は完全に見開き、魂そのものが彼女という存在に引き込まれてしまったのだ。

 ミリアンはブラジル人といっても日系四世であり、外見的には日本人と変わらなかった。ただ、ブラジルで育ってきたせいか肌が若干浅黒く、ウェーブのかかった肩まで伸びる長い黒髪はブラジル人らしさを感じさせた。そして彼女の瞳は大きくて美しく、僕には魅惑的だった。そんなミリアンは十八歳で、家族と共に来日して横浜に住み、彼女の母親と一緒に同じ職場で働いていた。

ミリアンが働く物流センターの三階では、海外の日系人や南米の人々が派遣スタッフとしてグループを成して働いていた。そのせいかミリアンは日本語をあまり話せなかった。

 ミリアンに一目惚れしたことで情熱的なアプローチを始めた僕は、日本語が話せない彼女と会話するために、彼女の母国語であるポルトガル語を独学で学び始めた。しかし、すぐにポルトガル語をマスターできるわけではない。そのため、ミリアンと話すときは、日本語を話せる彼女の仕事仲間に通訳してもらうしかなかった。しかしそれでは、踏み込んだ内容の会話はできないので口説くことさえままならない。それに通訳してくれるミリアンの仕事仲間のことを考えると、僕ら二人の会話のために貴重な休憩時間を奪ってしまうようで心苦しい。

 そう思った僕は、職場に日葡辞書を持っていき、辞書を交えながらミリアンとの二人だけの会話を試みた。しかしそれでも大した内容の会話はできず、そのためミリアンが困惑した表情を見せることも少なくなかった。

 やがて僕は、三階で働く南米の人たちの間で話題の人となった。

 ブラジルの女の子を口説こうとしている日本人がいる、と。

 しかし、その好意的な話題がきっかけとなって南米の人たちとも仲良くなった僕は、昼休みに物流センターの駐車場で彼らとサッカーをするようになった。そして南米の人たちと駐車場でサッカーを始めると、ミリアンたち南米の女性たちも駐車場の端に集まって、おしゃべりをしながらサッカー観戦をするようになった。

 そんなある日のこと、いつものように職場の駐車場で南米の仲間たちとサッカーをしていると、ボールが駐車場の端にいるミリアンの方へと転がっていった。ボールはミリアンの足元に転がり、そして止まった。僕がボールを追いかけてミリアンの足元にあるボールを拾い上げると、彼女と目が合った。その瞬間、ミリアンは恥ずかしそうに何か言葉を発しながら両手で自分の顔を覆った。そんなミリアンの様子を見ていた彼女の友人たちは、にこやかな笑い声をあげたのだった。

 僕と突然目が合っただけでこんなに恥ずかしそうな反応をするなんて、今どきの日本人女性には滅多に見られないのじゃないかな。

 僕は、そんなミリアンに純情さを感じて、さらに惚れ込んだのだった。

 そんなミリアンと知り合って一カ月ほど過ぎた日のこと。僕は、職場での昼休みに、誰もいない五階のフロアへミリアンを連れて行った。

 休憩時間で誰もいない静かな倉庫内で、僕はミリアンの大きくて美しい瞳を黙って見つめた。不思議そうな表情を浮かべて僕を見ているミリアンを見つめながら、僕はポルトガル語を発した。

 「ゴスト・ジ・ヴォセッ」

 ポルトガル語で『君が好きだ』と伝えた。

 僕からの告白を受けたミリアンは、恥ずかしそうに微笑みながら頷いて何やら短い言葉を発したけれど、聞き取れず理解できなかった。

 「僕のこと、嫌い?」

 ミリアンの反応に少しばかり不安を覚えた僕は、ポルトガル語で尋ねてみた。すると、ミリアンは「ナォン」と否定しながら首を大きく左右に振った。そして照れたような表情を浮かべながら黙って僕を見つめ続けていたのだった。

 結局、ミリアンへの告白の結果は、彼女の発した言葉が僕には理解できず、その気持ちも分からないままだった。だけど、誰もいない五階フロアでの二人だけの時間は幸せに満ちていた。しかしそんな幸福感は、突然終わりを告げることになる・・



(次回、小説『ネット恋愛』の更新は10月6日の予定です)





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