Novel Creator として創作活動しています。小説『ネット恋愛』・・・3の倍数日に連載中☆ミ・・・☆

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小説『ネット恋愛』第1章 第14話 イノシシ

   第①章 出会い  

  第14話 イノシシ



 そんなある日の夜、“なお”から思いがけないメールが届いた。

 電話で話してみたい、と。

 これには少し驚いた。もちろん電話で話すことは歓迎だけれど、どちらかと言えば、あまり社交的とは言えない僕にとって“初めての電話”は緊張してしまう。だけど、女性との会話に飢えていた僕は、すぐに了解のメールを送ったのだった。

 すると“なお”はすぐに反応してメールを返信してきた。そこには“なお”のケータイ番号が記載されてあった。

 「電話して、ということか」

 僕は苦笑いしながら呟くと大きく息を吸った。案の定、心拍数が上がってきた。メールでのやりとりを何度もしてきたとは言え、実際に電話での会話となるとやっぱり緊張してしまう。

 僕は思いきって“なお”のケータイに電話を入れてみた。コール音が三回ほど聞こえてから、明らかに女の子と分かる高い声が勢いよく耳に入ってきた。

 「もしもーし?」

 「あ、ヒロだけど・・」

 メールではヒロと名乗っているので、咄嗟にその名前を告げた。

 「ヒロさん、電話では初めましてだね」

 「そうだね。ていうか本当に女の子なんだね」

 緊張気味の僕は思いついたままの言葉を口に出していた。そんな僕の言葉に“なお”は笑った。

 「当たり前じゃん、男の子かと思っていたの?」

 「あ、いや、そういうわけじゃないけど」

 久しぶりの女性、しかも女子高生との会話に緊張していた僕は、とにかく何か話さなければ・・と、と自分の心にムチを打ち続けていた。

 そのとき、ふと疑問が浮かんだ僕は“なお”に尋ねてみた。

 「でもどうして急に電話で話したくなったの?」

 「だってぇ、メールだと返事が来るのを待たないといけないじゃん。だから電話の方がいいかなって」

 そういうことか、と女子高生らしい言い分に僕は納得した。

 普通であれば、常識的な社会人の女性は、知り合ったばかりの男性に対して警戒心を抱くので、そう簡単にはケータイ番号などの個人情報を教えたりはしない。しかし“なお”は高校生だからか警戒心は薄いらしい。だから何のためらいもなく、僕に自分のケータイ番号を教えてくれたようだ。

 それはともかく、初めてのメル友との電話での会話は、最初のうちこそ緊張はしたものの、すでにメールでのやりとりで仲良くなっているぶん会話は弾んだ。やはり“なお”とは電話での会話でもフィーリングが合うようだ。

 そんな“なお”との初めての電話は三十分ほどで終わった。最後に“なお”は明るい声で「バイバイ」と言って電話を切った。

 「本当に女子高生だな」

 僕は微笑みながらそう呟いた。

 電話を切ってまもなくメールが着信した。

 “なお”からだった。すぐにメールを開いてみる。

 『電話ありがとぉね。楽しかったぁ。また話そうね。おやすみなさぃ』

 “なお”からのメールには、毎度のように顔文字や絵文字やらで彩られており、彼女の機嫌の良さが伝わってきた。それを認めた僕は、安堵を感じながらため息をついた。

 良かった、“なお”は僕との初めての電話での会話を楽しんでくれた。もし、つまらなさそうだったら、こっちが残念な気持ちになってしまう。

 やっぱり女の子からは楽しい男だと思われないといけないのだ。それにしても女子高生と電話で話せるなんて、何て美味しい展開なんだろう。

 女子高生に対して、ある種の憧れを抱く成人男性は少なくない。そして、普段の生活の中で、女子高生と知り合う機会などそうあるものでもない。それが今では、メル友募集サイトで知り合って、メールを交わしたり電話で話せるなんて、本当に良い時代になったものだと思う。

 場合によっては女子高生がカノジョになるなんてこともあり得なくもない。

 しかし、僕にとって、女子高生“なお”は恋愛対象ではなかった。だからとくに会いたいとも、電話でもっと話がしたいとも思わなかった。

 それにしても不思議なもので、世の中の男にとって、下心を抱かない対象の女性とは仲良くなれるのに、下心を抱く対象の女性には逃げられる傾向がある。やはり女性には、男の下心を感知する防衛本能的な能力が備わっているのだろうか?

 僕は“なお”には下心を抱いていない。むしろ、妹のような存在だからこそ気楽にメールを交わせる。それに“なお”とは考え方や趣向が合っているのだろう、彼女とは色々な話題でメールや電話での会話を交わすことができた。

 例えば、音楽の話題。

 僕も“なお”もボン・ジョヴィが好きで、なかでも『イッツ・マイ・ライフ』という曲は、お互いにとって大のお気に入りだった。だから電話での会話中に、二人でサビの部分を一緒に歌ったものだった。

 そんな“なお”との楽しいメールと電話での会話は二週間ほど続いた。しかしそんな楽しい日々も、終わりを迎える日が近づいてきた。



 いつしか僕は、女子高生“なお”に対して少なからず好意を抱くようになっていた。そしてその気持ちは“なお”に会ってみたい、という好奇心を呼び起こした。

 “なお”は可愛いのかな?どんな顔をしているのだろう?なんだか会ってみたくなってきた・・。

 そしてついに僕は“なお”との電話での会話中に、会ってみたい気持ちを伝えたのだった。

 「なおに、一度会ってみたいな」

 「えー?恥ずかしいよ」

 「なんで?恥ずかしがることないじゃん」

 「え?マジで言ってるの?」

 「うん、なおがどんな顔してるのか見てみたい」

 “なお”に会いたいと伝えてしまった僕は、まるでイノシシのように脇目も振らずに『会いたい』気持ちを背負って突進を始めた。そして、すでに突進を始めてしまった僕には“なお”の女心を察する余裕など全く失っていたのだった。

 「一度くらい良いじゃん。会おうよ」

 「だって恥ずかしいもん。メールや電話だけじゃダメなの?」

 「実際に会って話をしてみたいんだよ」

 「でも・・・」

 ついに“なお”は黙り込んでしまった。それでも僕は何とか“なお”から会う約束を引き出そうと必死になった。走り出したイノシシは、もう止められなかった。

 「僕は、なおのこと、友だちとして好きだよ」

 「私も、ヒロさんのこと友だちとしては好きだよ」

 「だったら会おうよ」

 「でも私、他に好きな人がいるの」

 僕は、その“なお”の答えに少なからずショックを受けた。

 「好きな人って、同級生とか?」

 「うん。まだ片思いだけど好きなの」

 「そっか・・。でも僕のことも友だちとして好きなんでしょ?だったら会おうよ」

 自分でもしつこいと思ったものの強引に押してみた。すると“なお”は再び黙り込んでしまった。もしかしたら前向きに考えてくれているのかもしれない。僕は“なお”からの返事を待った。

 「ごめんなさい、やっぱりヒロさんには会えない」

 「そっか・・」

 “なお”の返答に今度は僕が黙り込んでしまった。二人の間にはケータイを通して重い空気がよどみ始めた。そしてまもなく“なお”が重々しい口調で沈黙を破った。

 「じゃあ私、そろそろ寝るね。おやすみなさい」

 「あ、おやすみ・・」

 明らかに気まずいなかでの会話終了だった。

 僕は折りたたみ式のケータイをパタンと閉じると深いため息をついた。

 そっか、会えないなら、もうこれ以上は電話代を使ってまで話す必要はないな。

 僕の頭の中は打算と失望感でいっぱいになっていた。

 それ以来“なお”とメールを交わすことは極端に少なくなっていき、電話で話すこともなくなった。僕は疎遠となった“なお”との関係をとくに気にすることはなかった。やがて二人の純粋なメル友関係は自然消滅したのだった。








◎ 次回、小説『ネット恋愛』の更新は10月18日の予定です





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